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エッセー集 イタリア散歩道

<Amo l'Italia のあまり、ワイナリーまでたどり着いちゃいました>

渡邊 哲也
Casa Watanabe代表Le Ali 32号

 第41回に横浜会場で受験(4級合格)していた者です。

 イタリア語とは、20年も昔の2000年、安価な団体旅行で初めてイタリア旅行のプランを立て、少しは話せた方が楽しいかと某局のテレビイタリア語を見た時からの付き合いになります。歴史が好きで、遺跡、教会、美術館、政庁舎、広場等々に感激していましたが、もう一つ、ワインにも驚いていました。当時、ワインには、少々放置すればすぐに酸っぱくなり、その割には結構高額、など良い印象持っていませんでした。が、あっさり心変わり。それ程?の料理と、同じくそれ程?のワインの組み合わせが実に美味しく感じられることが度々あり、ワインは貴族のための高級品、であるより、庶民が人生を楽しむ知恵の結晶と考えるべきでは?と認識が変わりました。それが現在に至る最初の伏線です。

 その後、度々のイタリア旅行。より楽しむためにイタリア語の学習も続け、アグリジェントのあるホテルでは「神殿が見えて浴槽がある部屋が良いのですが?」(確か“Vorrei una camela con la vasca da bagno, anche e e e... con la vista di il tempio.”など)と、間違いながらも日本人がイタリア語で注文付けてきた!と驚かれ、ヴェネツィアのトラットリアの胡散臭いカメリエーレからは、「さてはイタリア人の恋人がいるな?」(詳細は忘却。が、彼らの表情と”ragazza”程度の単語が聞き取れれば間違う余地なし)とあらぬ疑い?をかけられ、家族からは遊んでばかりいないで検定受けたら?なんて唆されましたが、その時は挫折。やはり旅行会話だけでは検定合格は難しいと痛感したものです。(上の写真は旅行の集大成とも言えるダニエリにての一枚です)

 その後、いつのまにかワインの占める部分が広がり、他方では自分の価値観と仕事とのギャップは広がり続け、ついにパフォーマンス低下が会社の目に止まる事態に!結果は明らかですね。途中は端折りますが、一念発起。それまでの人生で張られた数々の伏線を回収し、入社当時は楽しいと感じていたはずのソフトウェア開発を辞め、ワイン産業に携わることを決断。検定合格はちょうどその頃のお話です。

 山梨のとあるワイナリーに転職。社長は実に親切にしてくれたのですが、慣れない仕事で無理をして、残念ながらワインのタンクから転落して骨折入院。退院してもデスクワークしかできない日々。でも、そのおかげで酒税法や帳簿の付け方を教えて頂き、今に繋がる下地ができます。ただ、組織には色々な人がいるもの。今まで通り作業ができないなら、どこかに行け!という方もおり、酒税法上必要かつ面倒な書類を書いていても、役所への届け出が如何に大変かわきまえない、心ない言葉に傷付くこともしばしばでした。

 そんな頃、マイクロワイナリー(規模が小さく個性的なワインを醸造)を並べたワイン村建設のプロジェクトの話を聞き、参加を決意。自分のワイナリーを作る活動開始です。我ながら無謀とも思いますが、骨折の後遺症もあり、周囲と同じペースで動くのが苦しいものの、何とか動ける。では自分のペースで働ける環境を作れば良い!と、かなり無茶したと思います。すっかり動けなくなったわけでもなし。まだまだやれるのだから、もっとあがいてみるに決まってるじゃないですか?

 しかしこのプロジェクトもトラブル続き。まずは、イタリアでも定番の埋蔵文化財問題で足踏み。敷地全体の開発事務を請け負った測量会社にスキルがなく、提出する書類も不備だらけで、ことごとく行政に却下されやり直しの連続。加えて道路の中心線の測量を間違うは、側溝の勾配間違いで水が溜まるは、もう大変!挙句の果てに書類と違うものが完成してやり直し工事で1年半あまり遅延。市役所・県庁には、嘆願、確認、もしくは催促で訪問した回数数知れず。と思えば、遅れて完成したのは正にコロナ禍真っ只中。今度は融資を快諾していたはずの金融機関が先行きを悲観して、今になってまさかの掌返しの融資拒否⁉トラブル尽きないプロジェクトをなんとかここまで綱渡りしてきました。

 やっと完成した私のワイナリー は “Casa Watanabe” と言います。全てが一目で見通せるマイクロワイナリー。是非遊びに来てください。この会報誌を持って来た方には何かサービスしますよ⁉

 最後に大好きな諺を一つ。”Campa cavallo, che l'erba cresce.” 「待てば海路の日和あり」みたいな感じですが、私が午年でもあり、この生きるか死ぬかの瀬戸際の強烈さが好きです。「生きろ、馬! そのうち草も生える!」そうです!きっと草が蒼青と茂る季節も巡ってくるのです! こんなところで終わるなんて勿体無いこと、できませんよね? こんな今こそ、多くの方々に届けたい諺です。

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